ニャゴめし酒場

田舎のアマチュア写真家のたわごと

石見神楽カレンダー2月 演目「塵輪」

2月の演目は「塵輪(じんりん)」だったので、今日はそれの紹介

塵輪」は二神・二鬼で舞われる鬼舞い

2人の神と2匹の鬼が戦い、これを善と悪に置き換えると、必ず最後に善が勝つというわかりやすい内容

古典神楽の部類では自分の好きな演目ベスト8くらいかな(どちらかというと創作神楽の方が好きだけど)

今回は解説(字幕)付きの「塵輪」を江津市の中では大好きな団体「谷住郷神楽社中」で

谷住郷さんは大太鼓の人の歌の声とか響きが上手で心地いい、舞いも引き立つ

解説付きだけどあらすじは、

第14代の帝・帯中津日子の天皇の時代に、異国より日本に攻め来る数万騎の軍勢を迎え撃つことに

その中に塵輪という、背に翼があり、黒雲に乗って飛びまわり人々を殺す悪鬼がいると聞き、天皇自らが天の鹿児弓(あまのかごゆみ)、天の羽々矢(あまのはばや)の武器を持って、高麻呂を従え討伐に向かい、激戦の末に退治するという神様の武勇伝だ

 

登場人物は帯中津日子(たらしなかつひこ、仲哀天皇のこと)、その従者の高麻呂(たかまろ)、塵輪(白鬼と赤鬼) 40:52分の動画の前半はお囃子と歌で、その内容は美しい情景を語り神様は貴きもので、戦う者の決意を表したものと自分は解釈する

お囃子や歌に合わせて帯中津日子と高麻呂が舞い、セリフもあり、天皇が高麻呂に塵輪が飛んで来たら、自分に知らせるよう命じていったん幕に下がる

高麻呂は暗闇の中(神楽では舞台上は月明りだけの明るさという設定が多く、神と鬼の間には実際には見えないけど、山があったり谷があったり茂みがあったりすると想定して鑑賞するといい)、塵輪の出現を待つ

始まって19分頃から黒雲に見立てたスモークが焚かれ、見る側はワクワクを抑えきれないまましばし待つ

そして1分半も焦らされた末、20分頃に塵輪の白鬼が登場するので超見どころ

高麻呂と白鬼は暗がりの中お互いを探し、高麻呂の手に白鬼の手が触れたことで互いを認識する

軽く相まみえるけど、ここで高麻呂も退場(………こっそり言っちゃうと裏で着替えるため)

続けて赤鬼が登場し、2匹で迫力の舞いが数分続く

鬼棒を地に付け片足姿の鬼の見栄も好き、たまに家でマネしたりする

その後またスモークが焚かれ、今度は鎧姿の素顔になった神2人が登場し決戦となる

ここでは、さほど広くない舞台での4者の激しい舞いは、稽古のたまものだと魅せ付けられてしまうところに感動がある

最後は弓と矢の武器で鬼は退治され退場し、(勝ったので)神による喜びの舞いが舞われる

41分弱は普通長いと感じるけど、神楽はこれくらいの長さが丁度いいしおもしろい

 

刺繍の衣装は25キロから30キロで1着2~300万円

4者揃うと舞台上はしめて800万くらいで舞っていることになる、演目によっては1千万以上で舞う場合もあるので、たまに思わず嫌らしい金勘定をしてしまう

衣装の背には龍の刺繍、赤鬼の背には翼のあしらいがあって、異国から飛んできたことと分かる

面の紐が結ばれてる付近にある、扇のような紅白の飾りは「力紙(ちからがみ)」というもの、白一色だけの場合もある

面の縁から出てる長い毛は「鬢毛(びんげ)」という

鬼のワイルドなヘアスタイルは、「がっそう」と呼ばれる被り物のこと、・・・と、いろいろ勉強してますぜ

塵輪は鬼2匹が退場する際に、でんぐり返しで引き上げるけど、重い衣装を身に着けてでは大変だろうな

そのまま汗だくで疲れ果てて動けなくなるとも聞くので、衣装を脱がせるのは社中の他の人だったりする

こんなに大変な思いをしてまで、資金もいるだろうに、伝統を受け継ぐことは重要なんだろう

誰もがプロじゃなく昼間は仕事をしていて、夜間や休日に稽古に励むことを、好きでやってるというから頭が下がる

今のこのコロナの影響で公演は次々と中止に追い込まれてるので、舞う側も見る側も終息するのを待つだけなのかと思うと、ウイルスには逆らえない人間の無力さを感じてしまう

けど近いうちに、何もかもが去年みたいに祝賀ムードになってることを願う、東京5輪もあるし

 

去年の12月初めの、まだコロナの「コ」の字も知らない時期に塵輪を生で見てたよ

 

スモークが焚かれて煙ってたなぁ、下が見えないけど白鬼の見栄のポーズ

 

凄くおもしろかった、また生で見たい、すごく見たい